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年寄りの白血病ブログ

食道がんの事④

多臓器(遠隔)転移(M)
食道以外の臓器(肺・肝臓・脳・腹膜等)に転移が有るか無いかによって、
Mで表現されます。
これはがんが血管の中に入り込み、血液に乗って流れて行った結果です。
言い換えれば、がんが局所の病気から、全身病になって居る事を示します。
残念ながら、この転移が有る場合は、完治は非常に難しく、手術適応が無い状態です。
しかし、転移の個数・部位によっては、手術で患部を取り去る事によって、
治療効果が期待できます。


壁内転移(IM)
がんの場所から離れた、他の部位・食道・胃の壁の中に転移を起こすことがあり、
食道がんの特徴とも言われています。
IMと表現され、進行度の評価には記載されていませんが、
予後(治癒率)が悪くなる要因の一つとも言われています。


進行度(Stage)評価
壁深達度(T)とリンパ節転移(N)遠隔臓器転移(M:血行転移)によって
進行度が決まります。


この進行度によって、治療方針・予後(治療後の生存率)の予測が決定します。


予後(5年生存率)としては
Stage0=100% Ⅰ=96% Ⅱ=84% Ⅲ=50% Ⅳa=20%   Ⅳb=0%(当科)です。


*この成績は、他施設と比べても同等の成績です。
StageⅣaに関しては、当科の成績は他施設に比べても良い方であり、
理由の一つとして、再発しても外科的な切除が可能な限り、
諦めずに外科治療を行っているためと思われます。


*因みに俺のStage評価は
転移N0 壁深達度T1b なのでStage1になるみたいです。


Stage1でも血管までがんが、浸潤しているので
内視鏡手術は無理と言う事で外科療法になるので
この後はそちらを書いて行こうとおもいます。


外科(手術)療法
がんの深達度が粘膜層以下に及んでいる場合に適応になります。
現時点では、食道がんの標準治療は、外科療法を中心として、
化学療法(抗がん剤)放射線療法の組み合わせが最良
と言われています。


手術は身体からがんを切り取ってしまう方法で
現在最も一般的な治療法です。
手術ではがんも含め食道を切除します。
同時にリンパ節を含む周囲の組織を切除します(リンパ節郭清)。
食道を切除した後には食物の通る新しい道を再建します。
食道は頸部・胸部・腹部にわたっていて、
それぞれの部位によりがんの進行の状況が異なっているので、
がんの発生部位や全身の状態によって多少術式が異なります。


原則的には胸部・腹部食道をほぼ全部切除(食道亜全摘術)します。
同時にリンパ節を郭清します。
胸部食道がんでは、腹部や頸部のリンパ節にも転移を起こすことが多いので、
腹部や頸部のリンパ節を郭清します。
食道を切除した後、胃を管状に作り直して引き上げて、
残っている頸部食道と繋ぎ(吻合)、食物の通る道を再建します。
胃が使えない時(胃切除術など胃の手術を行っている場合)には
大腸・小腸を使います。


手術法には
   食道抜去術(食道を取り去るだけで、リンパ節郭清は無し)
    早期の食道がんで食物を食べられる様にするだけの目的


   開胸式(右側の胸を大きく開く)=従来の方式


   胸腔鏡式(5か所に径1cmの穴をあけて手術ー手術浸潤が少ない)


が有ります。


*当科では1966年11月より手術浸潤の軽減を目的に標準式として、
胸腔鏡・腹腔鏡併用食道切除・再建術を行っています。
2013年までに約650例と日本で一番多い胸腔鏡手術症例の実績があり
手術成績(予後)も従来の開胸式と比べて差がない事は確認しております。
むしろ術後の痛み・合併症率は減少し、早期退院・社会復帰が可能となっています。


しかしながら現時点では、この手術が限られた施設でしか行われていない事
ガイドライン上で以下の扱いをされている事が課題となっています。


「臨床ではすでに普及しつつあるがまだevidenceが確立されていない」
低浸潤性・根治性・遠隔成績などに関して今後大規模な研究で立証する必要性がある。
馴れた施設では、手術時間・出血量・郭清リンパ節個数など開胸例と比較して大差なく、
術後の疼痛の軽減・肺活量の回復が早いなど根治性とQOLの向上が有用であると
報告されている。


手術後の合併症(当科)
手術に続いて発生する余病(合併症・偶発症)の発生率は
肺炎5%以下、
縫合不全(つなぎ目のほころび)3%前後
嗄声(声がかれ、食物の飲み込みが上手くいかない)90%が術後2~3か月でなおる8%
肝・胃・心障害・脳梗塞 0.5%です。
これらの合併症が死につながる率、
すなわち手術死亡率(手術後一か月以内に死亡する割合)は
手術前に他の臓器に障害を持っている人で高く、1.5%です。


*縫合不全ー多くの場合(99%)は1~2週間の絶食で自然治癒します。


全国平均では
縫合不全 10~30%
肺炎   20~30%
嗄声   10~30%
手術死亡率 2~10%
と言われています。

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